
バイオ・再生医療学科 卒業
- バイオ技術者
円満 朱音 さん
就職先:株式会社iPSポータル
Q:現在の仕事内容は?
実務系の業務では、主に以下のような試験に従事しています。
①iPS細胞の維持培養(いつでも試験に使用できるように継代を繰り返すこと)
②血球細胞からのiPS細胞樹立(製造)試験
③樹立後の未分化性確認試験や三胚葉分化能確認試験等の品質試験
④iPS細胞からの各種細胞(運動神経や前脳神経などの神経細胞・間葉系幹細胞・表皮細胞 その他)への分化誘導試験
②では、培養中の温度や播種密度によって樹立の効率がどう変化するかを確認しています。
③では、フローサイトメーターやリアルタイムPCR、共焦点イメージサイトメーター(蛍光顕微鏡)等、様々な機器を使用しています。
他にも、ラボの管理業務では、以下のような業務も実施しています。
①社内共通試薬の調製や在庫管理
②ラボにあるピペットの校正や機器の情報リスト化等の機器管理業務
③信頼性保証体制のSOP(標準作業手順書)の作成と文書管理業務
④CPC製造に向けた指図記録書作成等の文書整備
Q:仕事のやりがいは?
iPS細胞は、株やクローンによって増殖するスピードや分化能が異なったりするため、思ったように試験が進まないこともあります。そのようなトラブルに対して、「何をどう変えれば思ったように試験が進むのか?」「ここをこうすればもっと良くなるのではないか?」とアイデアを出したり、時には有識者に意見を求めたりして、臨機応変に対応できるよう日々精進しています。
社内試験の内容や、受託する案件やによっては、iPS細胞以外にもヒトの初代培養細胞を扱うこともあります。
初めて扱う細胞もあったり、思うように培養できなかったりして難しいことも多々ありますが、色んな種類の細胞が扱うことができて楽しいです。
また、フローサイトメーターや共焦点蛍光顕微鏡等、高額な機器は微小なトラブルが後の大きな故障につながるため、使用する際はとても緊張します。
Q:仕事をする上で大切に思うことは?
培養時のトラブルやハプニングを見過ごすと、取り返しのつかないことになってしまうこともあるため、普段から様子を確認するようにしています。
自分で間違いを起こしてしまった時、普段と何か少し様子が違うと感じたときなどは、上司や先輩に言いにくかったり、「言わなくても何とかなるか」と思いたくなりますが、心を鬼にして必ずその時に報告するようにしています。
Q:今の職種を目指したきっかけは?
入学時は化粧品分野を志望していましたが、授業であった細胞やたんぱく質系の実習が楽しくて仕事にしたいと思い分野の変更をしました。
その中で、祖父が脳梗塞を患ったことがきっかけで、難病や治療方法の無い病気で苦しんでいる方々の力になりたいと思い再生医療や細胞培養の分野を志すようになりました。
中学生の時に、理科の資料集でiPS細胞を見て「いつかこんな仕事がしたい!」と思っていました。新卒で入社した企業では、別の幹細胞の製造や研究を行っており、iPS細胞は未経験でしたが思い切ってチャレンジしました。
Q:大阪ハイテクで良かった点はどんなところですか?
実習が多く、元々実験が好きだった自分にとって、楽しく学ぶことができました。
座学での知識ももちろん大切ですが、手を動かして分かる発見や疑問もあり、いろんな分野の実習はとてもいい経験でした。
2年生の夏にあった学外研修では、大学での専門的な実験や英語のプロトコルで試験をしたりと、学内ではあまりなかった経験もできました。
3か月の短い期間ではありましたが、初めての一人暮らしもあり、人間的にも成長できるきっかけになりました。
Q:学生時代、印象に残っていること、頑張ったこと、今に役立っていることは?
学外研修で学んだ電気泳動やウェスタンブロット、免疫染色などのタンパク質系の試験は、前職・現職両方でよく使用する技術なのでとても役立っています。
また、バイオや理系の英語の授業は学生当時とても苦手でしたが、バイオ系の機器や試薬の取扱説明書は英語であることが多く、英語の読解力の大切さを痛感しました。学外研修でのプロトコルが英語だったこともあり、必死に翻訳していた記憶があります。その経験から、今では軽く読めるようになったので、英語に触れる経験はとても大事だなと思いました。
授業で受験した危険物取扱者に資格もとても役に立っています。試験ではガソリン系の溶液を使用することはありませんが、アセトン等の有機溶剤を使用することが結構あるため、使用量が増えてくると在庫管理時に意外と重宝されます。資格取得のための授業は、消防法も関わってくるため難しかったですが、その分知識もたくさん習得できたのでとてもいい経験になりました。社会人になった後も、個人で勉強して乙種4類以外の資格も取得しました。
クラスメイトとも3年間仲良く過ごせたのも楽しかったです。今でもたまに連絡を取って飲みに行ったりしています。
Q:同じ業界を目指す後輩に一言!
細胞培養分野では、細胞の種類や、採取したドナーさんによって増殖スピードや分化の挙動が変わってくるため、細胞培養の知識と技術がたくさん必要です。それなりに時間と経験が必要なので大変ですが、できることが増えてくるとやりがいもあって、とても楽しいです。
学校という場で授業がある内に学べるものは全部学ぶ勢いで頑張ってください!(社会人になると、時間的にも勉強するのが大変です)
その場では必要ないように思っても、絶対に後々必要になってきます。
学生時代にしかできないこともたくさんあるので、今のうちに目一杯遊んで楽しんでください!
円満さんが働いているiPSポータルはどんな会社?
iPS細胞などの幹細胞技術やゲノム編集技術などの新しい技術を取り入れたCell-Techにより、創薬や再生医療のみならず、生活習慣病の予防や健康美容分野、更にはそれらに関わる産業全般の研究及び事業支援などもおこなっている会社です。