若返りの薬をテーマにした映画「サブスタンス」
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こんにちは、バイオ・再生医療学科の和田です。
突然ですが、みなさんは「若返りの薬」って聞いたらどう思いますか?
「そんなのあったら最高じゃん!」と思うかもしれませんね。
今回紹介する映画『サブスタンス』では、そんな夢みたいな薬が登場します。
でも、科学的に見て本当に実現可能なのでしょうか?ちょっと考えてみましょう!
まずは映画のあらすじ!
かつてスクリーンを輝かせた人気女優エリザベス(デミ・ムーア)。
しかし、彼女を襲ったのは交通事故と避けられない容姿の衰え。過去の栄光に縛られ、精神的苦痛に苛まれる彼女は、再生医療治療薬「サブスタンス」に手を出します。
この薬は単なる若返り薬ではなく、「老いた体(エリザベス)」をもとに「新しい若い体(スー)」が作られるというもの。
7日ごとに老いた体と若い体を入れ替えるという絶対のルールがありました。しかし、老いた体に戻るたびに募る苦しみから、新しい若い体でルールを破り始め……。
再生医療って何?
再生医療とは、損傷した組織や臓器を修復・再生する最先端の医療技術のことです。
iPS細胞をはじめとする、多様な細胞へ分化できる細胞を活用し、これまで治療が難しかった病気やケガを治す研究が進んでいます。
今回の映画では、再生医療の技術によって開発された「若返りの薬」が登場しました。
でも、映画のように「体の中で新しい体を作る」なんてことはできるのでしょうか?
『サブスタンス』の若返り薬は実現可能?
残念ながら、現時点ではかなり難しそうです。その理由は2つ!
①細胞の分裂スピードの問題
人の細胞が1回分裂するのに約23時間かかります。
受精卵が赤ちゃんになるまでに約9か月も必要なことを考えると、映画みたいに「短期間で新しい体が完成!」なんてことはまず難しそうです。
② 体の細胞は基本的に変わらない
みんなの体には、心臓や肺、肝臓など、それぞれの臓器が決まった場所にありますよね?
これは一度「心臓」になった細胞が、あとから「肺」になったりはしないからです。
映画では、新しい体が「体の中で作られて出てくる」仕組みですが、実際には体の細胞はそんな風に自由自在に変化しません。
もちろん、iPS細胞のように特殊な技術で細胞を初期化することはできますが、それでも新しい体を作るのはかなり大変です。
未来の再生医療には期待大!
映画みたいな若返り薬はまだまだ先の話ですが、実は医療の進化はすごいスピードで進んでいます。
例えば、現在でも脊髄損傷を治療する点滴薬が開発されていて、実際に使われ始めています。
これらの治療には、何か月もの時間とたくさんのプロの手が必要ですが、確実に前進しています。
実は研究されている老化に対するアプローチ~老化細胞を除去する薬「Senolytics」~
この研究は「老化した細胞を除去し、老化のスピードを遅らせること」を目標に進められています。
あくまで遅らせることが目的の薬ですが、実際にマウスに投与したところ、おじいちゃんマウスがお兄さんマウスに匹敵するくらいの効果が見られたそう!
もし未来に再生医療がもっと進化したら…?
・老化を遅らせるor若返らせて、元気な時間が長くなる!
・肌の老化を防いで、メイクなしでも若々しくいられる!
・内臓の健康を維持して、好きなものを美味しく食べ続けられる!
そんな未来が待っているかもしれません。
未来の科学者や研究者は、もしかしたらあなたかも…!
あなたもこの未来の医療の世界に飛び込んでみませんか?
【参考】現在の再生医療等製品(一部抜粋)
・人工培養表皮ジェイス(ヒト表皮由来細胞シート)→適応疾患:重症熱傷
・自家培養軟骨ジャック(ヒト軟骨由来組織)→適応疾患:外傷性軟骨欠損症
・テムセルHS注(ヒト骨髄由来間葉系幹細胞)→適応疾患: 急性移植片対宿主病(GVHD)
・ゾルゲンスマ®点滴静注(オナセムノゲン アベパルボベク)→適応疾患:脊髄性筋萎縮症
・ルクスターナ®注(ボレチゲン ネパルボベク)→適応疾患:遺伝性網膜ジストロフィー
・アベクマ®点滴静注(イデカブタゲン ビクルユーセル)→適応疾患:再発又は難治性の多発性骨髄腫