大阪万博で見た“心筋シート”どう作る?実はすごい細胞培養の力!
目次
はじめに
みなさんは、「EXPO 2025 大阪・関西万博」に行きましたか?
1日の来場者数が13万人を超えるほど注目されているこのイベントでは、
さまざまな最新技術や未来のアイデアが紹介されています。
中でも、パビリオン「PASONA NATUREVERSE」に展示されている「心筋シート」が話題を集めています。
実はこの“心筋シート”、
心臓の病気を治すために使われる再生医療の最先端技術なんです!
このブログでは、その心筋シートがどんなふうに作られているのか、
特に“細胞培養”という技術に注目してお話ししていきます。
たとえば――
・あのシートが浮かんでいる液体って何?
・なぜオレンジ色をしているの?
・なぜ動いているの?
このような「言われてみれば気になる!」という疑問を、わかりやすく解説するので、
万博に行った人も、これから行く人も、理系にちょっと興味がある人も、ぜひ読んでみてください!
話題の心筋シートってなんだろう?
オレンジ色の液体にぷかぷかと浮かぶ丸く白いシート。
パビリオン「PASONA NATUREVERSE」では、これが拍動している様子が見られます。
実はこれ、人工的に人間の手で作られた「心臓の細胞のシート」なんです。
将来的には、心不全などの心疾患を治療する新しい技術として期待されています。
心筋シートと心疾患について
心臓の病気になると、心筋(心臓を動かす筋肉の細胞)が壊死してしまい。
そして困ったことに心臓の細胞はほとんど再生しません。
たとえば皮膚の細胞は、約28日で新しく生まれ変わります(ターンオーバー)。
でも心臓の細胞は、1年で1%未満しか分裂しないといわれています。
100%回復するには100年かかる計算…それじゃ治るわけがありません。
だからこそ、人工的に心筋を育てて移植する「心筋シート」が注目されているんです。
再生する心臓
シートを作るには、細胞が必要!〜細胞培養ってなに?〜
「細胞培養」とは、体の外で細胞を育てる技術のことを指します。
細胞はとってもデリケートで、温度・栄養・酸素など、環境が少しでも悪いと生きられません。
そのため、細胞培養技術者が細胞のための適切な環境をつくってあげる必要があります。
イメージしやすいように言うと、魚を陸に置いておくとすぐ死んでしまいますよね?
でも水槽に入れて、酸素や水温、餌などをちゃんと管理すれば、生きられます。
細胞も同じで、細胞が生きられる“水槽”のような環境を、人工的に作る。
それが「細胞培養技術」であり、再生医療を支える技術なんです!
あのオレンジ色の液体の正体は培地!
心筋シートが浮いていたオレンジ色の液体は見ましたか?
実はこれ、「培地」と呼ばれる細胞を育てる専用の液体で、細胞に必要な栄養がたっぷり入っているんです。
中には、ブドウ糖・アミノ酸・ビタミン・ミネラル、さらに成長因子まで。
くわえてpHを色で判断できるように、フェノールレッドという色素も入っています。
万が一、雑菌が混ざった(これをコンタミネーションといいます)場合、色が黄色や赤紫に変化するので、一目でわかるんです。
さらに栄養分の消費状態も、代謝産物の量で色が変化するので確認できたりします!
ちなみにこの培地…2リットルでなんと約200万円…!
あの拍動はホンモノ?
実際に動いていましたよね。あれ、本当に拍動しているんです!
心筋細胞は、ひとつひとつが「自分で拍動(ドクンドクン)する」力を持っています。
そして細胞が集まると、お互いの動きに“合わせる(協調)”ようになります。
その結果、シート全体がまるでひとつの心臓のように拍動して見えるんです。すごいですよね!
未来の医療へ!心筋シートのこれから
すでに、この心筋シートを使った臨床試験も行われています。
結果も良好で、もし厚生労働省に承認されれば、世界初の治療法になる予定とのこと!
この心筋シートの元になっているのが、2012年に山中伸弥教授が発表した「iPS細胞」。
それが今、再生医療というかたちで実を結びつつあるんですね。
君の選択が、未来の医療を変えるかもしれない
日本政府も、再生医療の未来に力を入れています。
2030年:再生医療を支える知識や技術をもった技術者の人材の確保
2040年:難病などに対する治療法が日本で開発されている状態
こんな未来を目指して、今まさに技術が動いています。
そしてこの分野に飛び込むには、今がベストタイミング!
この万博の展示をきっかけに、理系の技術に少しでも興味を持ってもらえたら嬉しいです。
みなさんの身の回りにある「当たり前」も、ぜんぶ誰かの研究の成果です。
次の時代を作るのは、もしかしたらこのブログを読んでいるあなたかもしれません。
【お知らせ】理系でも、理系じゃなくても、未来の医療に関われる!
「でもわたし理系じゃないし…」そんな人でも大丈夫!
文系や商業系出身の学生も、本校では3年間じっくりと基礎から応用まで学び、医療を支える技術者へと成長しています。
大切なのは、「高校で何を学んできたか」よりも、「再生医療に関わってみたい!」という気持ちです。
理系・文系は関係ありません。大阪ハイテクには、ゼロからスタートしても、一歩ずつ成長できる環境が整っています。
ちょっとでも気になった方は、ぜひ話を聞きに来てくださいね。
未来の医療、一緒に支えてみませんか?