おせち料理を決めるのは縁起ではなく微生物!?
お正月といえばおせち料理。
黒豆は「まめに暮らす」、数の子は「子孫繁栄」、海老は「長寿」、昆布は「よろこぶ」など、
一つひとつに縁起の良い意味が込められています。
「縁起がいいから入っている」と思っている人も多いですが、本当にそれだけでしょうか。
今回は少し見方を変えて、「おせちの起源」と「バイオ的目線」でおせち料理について語ろうと思います。

おせちの出発点は「炊事をしない」ため
おせち料理が作られるようになった背景には、実は次のような生活習慣があります。
・正月三が日は火を使わない
・台所仕事を休み、神様を迎える
・だから事前に料理を作り置きする必要がある
つまりおせちは、“三が日のあいだ、調理せずに食べられる料理“でなければなりませんでした。
おせち料理の始まりは弥生時代とされていて、
冷蔵庫のない時代に、3日間料理を保管することには大きな問題がありました。

最大の敵は「微生物」
食品が傷む最大の原因は、細菌やカビなどの微生物の繁殖です。
微生物は、「①水分 ②栄養 ③温度」の3つの条件がそろうと、爆発的に増殖します。
つまり、三が日を乗り切るには、微生物を増やさせない工夫が絶対に必要だったのです。
ちなみに、食品衛生において食品の腐敗に関係する6つの要因をまとめてFATTOMと呼びます。
・Food(栄養) ・Acidity(pH) ・Temperature(温度)
・Time(時間) ・Oxygen(酸素) ・Moisture(水分)

おせちに隠された「微生物を抑える4つの秘密」
①塩・砂糖で増殖を止める
黒豆、数の子、栗きんとんなどは、しっかりと塩分や糖分が使われています。
実はこれは味付けのためだけではありません。
塩や砂糖が多いと、微生物は浸透圧によって水を奪われ、増殖できなくなるんです。
②酢でpHを下げる
紅白なますのような酢の物は、見た目でお祝い!って感じですが、中身は非常に理にかなっています。
酢によって食品は酸性になり、多くの腐敗菌は活動できなくなります。
pHによって微生物の増殖対策がされているんですね。
③水分を減らす・加熱する
田作り(ごまめ)や昆布巻きは、「乾燥・加熱」によって水分量が少なくなっています。
微生物は水がないと増殖できません。

おせち料理はバイオの知恵の結晶
以上のことからおせち料理は、
微生物の増殖条件を理解し、塩・糖・酸・乾燥を使い分け、三が日を安全に過ごすために作られた
生活に根ざしたバイオテクノロジーとも言えます。

いかがでしたでしょうか。
おせち料理は「縁起がいいから食べるもの」と思われがちですが、
実は三が日を安全に過ごすための、微生物との知恵比べでもありました。
今年のお正月は、ぜひ料理を味わいながら
「これはすっぱいな」「水分が少ないな」「味が濃いな」と、少しだけバイオ的な視点で眺めてみてください。
いつものおせちが、先人たちの科学の結晶に見えてくるはずです✨
