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アスレティックトレーナー(JSPO-AT)として必要なスキルを実技試験から読み解く!~part5~

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後期リハは動作を基準に考えます。動作トレーニングを進めるには、好ましい動作で行うことが大前提です。エラー動作を繰り返しても再受傷のリスクを上げるだけです。ですから動作のトレーニングを進める上で、まず克服すべき要因をアスリート側にも理解してもらう必要があります。そもそも傷害がどのように起こったかという発生機序がわかっていれば一定以上の情報はある訳です。特に誰かにぶつかったわけではなく自身の動作エラーで起こった非接触性外傷や慢性的な障害であれば、克服すべき問題は初期リハの段階から種を蒔くように意識させているはずです。それができていれば、この後期で収穫するようにそれを動作につなげていくことができるからです。ただ、実技試験では問題文にある発生機序や現状の情報を頭に入れながら、その場で問題点を把握する必要があります。11分間の持ち時間のうち、あまり時間をかけるわけにはいきませんから、2分程度で効率的かつ正確に評価し、現状把握し問題を抽出します。ステップワークで負傷したアスリートにアジリティトレーニングを行う、またジャンプの着地で負傷したアスリートにジャンプ動作のトレーニングを行うというように、傷害の発生機序とリハビリ目標が一致している場合は、その問題を克服するためのトレーニング内容になるはずです。実際の問題点を無視して、用意してきたプログラムをただ披露するような自分本位な指導は避けるべきです。今回は問題点把握からそれを克服する指導をするために意識すべきことを考えてみましょう。

各部位の姿勢であるアライメント(そもそもは骨配列の意)のうち、静止している状態のアライメントをスタティック(静的)アライメントと呼びます。じっと立っている時の扁平足(回内足)やX脚(外反膝)の状態などがスタティックアライメントにおける問題と考えます。下肢の問題の場合、立ち姿勢でこれをまず確認しますが、アスレティックリハビリテーションにおいては、動作の中でのアライメントであるダイナミック(動的)アライメントも重要です。じっとしていればそれほど扁平足と思わなくても、足を一歩踏み出したとたんに崩れることもあるのです!

ダイナミックアライメントを評価するには当然動いてもらう必要があります。

ですから下肢のケガから初期リハを経て歩行ができる状態になっているのであれば、立位姿勢を確認した後、歩行動作を見てみましょう。例えば、歩行時に持ち上げている側の足のつま先が下がり、足をついた時には足の外側に荷重が偏るクセがあるなら、足を上げる時につま先を引き上げ地面を踏む時に足の荷重がもう少し母趾球寄りになる感覚が必要です。逆に荷重が母趾球側に偏りすぎていれば、少し外側に寄せる必要があります。そもそも患側への荷重が不十分かもしれませんし、不安感から健側に荷重を寄せた歩き方になっているかもしれません。現状できるという動作にもエラーが含まれている可能性を意識しておきましょう。下肢の後期リハの問題ではランニング可能という状態であることが多いので、、その場合は走る動作を確認します。試験会場に十分なスペースがない場合には、その場で腿上げをするようにジョギングペースから現在可能と思われるペースまで徐々に上げていく方法でもいいでしょう。トレーニング負荷のスタートラインを知る意味でも有用です。

次に目標とする動作のために必要な動きを評価しますが、下肢のよくあるダイナミックアライメントのエラーである Knee in & Toe out で考えてみましょう。これはストップ動作やステップ動作、ジャンプ動作などで膝がつま先の向きよりも内側に倒れてしまうエラーです。前述のような荷重の母趾球側偏位でも起こりますし、膝の不安定性があったり、股関節の筋力不足でも起こります。この問題を見るには、まず荷重時の代表的な動きであるスクワット動作で見てみましょう。膝を深く曲げない浅いスクワットから段階的に角度を増やしましょう。段階的に負荷を上げることでどのくらいの動きで Knee in ようなエラーが出始めるのかが評価できます。足幅を変えてもいいでしょう。この先復帰する競技でどのような動きが必要になるのかを考えてテストします。両脚荷重時で問題が出ればそこで修正をかける必要がありますが、問題なければ片脚荷重に進みます。この時点で歩行ができていれば片脚で体重を支えられるはずですが、膝を曲げていく動作ではより負荷が大きくなるのです。両脚スクワット動作の中で重心を左右に移動してみてもいいし、前後に足を広げるスプリットスクワットの形でもOKです。スプリットスクワットも、後ろ足をより遠くに引くことで前足への荷重が大きくなります。足をついた状態での片脚荷重運動に問題がなければ、ランジという浮かした足を一歩踏み出す動作に進みます。足を上げる高さを段階的に変えることで、地面に足がつく瞬間のダイナミックアライメントを確認します。片脚での着地に不安がある場合は、両脚でのドロップスクワットを挟んでもいいでしょう。スクワット動作で沈む時にストンと落ちるようにする運動です。これも落とす高さを徐々に大きくします。

こうして段階的に評価することで、現時点で設定すべきスタートラインが決まります。エラーが出るところで修正をかけるところからスタートするのです。ここでは各関節に分割してアプローチするより動作の中で修正をかける方がいいと考えます。股関節の外転・外旋筋が全く機能していないなど、よっぽどひどければ基本に立ち返ることも必要ですが、そのあたりは初期リハで取り組んできているはずです。現状から先に進む方向で考えましょう。よくある修正方法に、チューブを用いたものがあります。両足をそろえて立った状態で、膝上にエクササイズチューブをくくり、あえて Knee in & Toe out になるような負荷をかけてスクワットをしたり、腰を落としたまま前後にカニ歩きをしたり、動作の中でどこをどうすれば正しい形に近づくのかを意識してもらうのです。足関節に不安定性があるようなら足にチューブをかけてもいいでしょう。つま先から先に動くとToe out しやすいので踵から動くような意識が必要です。

ここではこのように評価に基づく修正のための意識づくりを、意識トレーニングと呼びます。共通認識が持てるキーワードを設定しておいてもいいでしょう。例えば、トレーニング中に「ヒザ」という言葉は、この意識を呼び起こすためのキーにしておくのです。下肢だけではなく、投球動作による問題点や、あたり動作による問題点などあらゆる動作における問題点に気づく目を養いましょう。そのためには全身の様々な動作における解剖学的要素好ましい動作エラー動作について理解しておくことが必須要素になるのです!

次回のブログでは、いくつかの例をあげて実際の指導上のポイントを見ていきましょう。

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