鍼灸師になるには?必要な資格や免許取得までのルートを紹介
目次
鍼灸師は医療業界をはじめスポーツや美容、介護などさまざまな分野で活躍できる専門職です。鍼灸師として働くためには、養成施設での学習と試験を受けて資格取得が必要です。この記事では、鍼灸師になるための必要な資格や免許取得までのプロセスを詳しく紹介します。
鍼灸師とは?
鍼灸師は、鍼(はり)や灸(きゅう)などを用いて、身体の不調や病気を予防し、治療する専門家です。鍼や灸を用いて経絡や経穴(ツボ)、筋肉や神経に働きかけ、身体のバランスを整えることで健康を促進し、症状の改善を図り、痛みや不調の緩和を行います。
鍼治療
「鍼治療」は直径0.1〜0.3mm前後、長さ5cmほどの細い鍼をツボや患部に直接打つ治療法です。鍼治療は「痛そう」とイメージを抱かれるかもしれませんが、実際のところほとんど痛みはありません。
鍼を刺す方法は「管鍼(かんしん)法」と「撚鍼(ねんしん)法」などがあり、日本では主に管鍼法が取り入れられています。管鍼法は、金属やプラスチックでできた管の中に鍼を挿入し鍼を刺入する方法です。
灸治療
「灸治療」は、ヨモギからつくられたモグサを身体の上にのせて燃やしたて温めたり、温熱による刺激を与える治療法です。
鍼灸師が活躍する職場
鍼灸師は、病院やクリニック、鍼灸院などで鍼灸治療を行います。そのほか、美容鍼灸院やエステサロンなどの美容業界、スポーツジムやフィットネスなどのスポーツ業界、介護施設など多くの業界で活躍しています。
鍼灸師になるために国家資格が必要
鍼灸師になるためには、国家資格である「はり師」と「きゅう師」の資格取得が必要です。これらの資格は、厚生労働省が行う試験を受験し、合格をすることで取得します。国家試験の受験資格を得るために、まずは鍼灸師養成学校で鍼灸の基礎知識や技術を学び、国家試験に合格する必要があります。合格後は名簿に登録されると厚生労働大臣より「はり師」「きゅう師」の免許が与えられ、鍼灸師として活動ができます。
はり師資格について
はり師の国家試験の受験資格は、はり師の養成学校を卒業すると得られます。養成学校に3年以上通い、2月に国家試験を受験し、合格者が登録申請し名簿に登録されることにより「はり師資格」を取得できます。
きゅう師資格について
きゅう師の国家試験の受験資格は、きゅう師の養成学校を卒業すると得られます。養成学校に3年以上通い、2月に国家試験を受験し、合格者が登録申請し名簿に登録されることにより「きゅう師資格」を取得できます。
鍼灸師ははり・きゅう両方の資格が必要
鍼灸師は、「はり師」と「きゅう師」の両方の国家資格を取得した方しかなれません。「鍼灸師」は資格名ではなく、専門職としての名称であるため認識に間違いがないように注意が必要です。
国家試験も別の試験として実施されるため、各試験で合格しなければなりません。ただし、2つの国家試験は同じ日に行われ同時に受験でき、共通科目は免除されるため同時に受験する方がほとんどです。そのため、養成学校に通うと最短3年で鍼灸師を目指せます。
鍼灸師になるまでのルート
ここからは、鍼灸師になるまでのルートについてより詳しく解説します。
1.はり師・きゅう師の養成学校で学習
高校を卒業後、はり師・きゅう師の養成学校で、鍼灸師に必要な基礎知識やさまざまな技術を習得します。
養成学校とは、厚生労働省または文部科学省に認可を受けている大学・短大・専門学校など、はり師・きゅう師の養成課程がある学校です。養成学校で3年以上の知識と技術の学習が必要です。
はり師・きゅう師に関する学習内容は、主に以下のような内容です。
【学習内容】
- 基礎科目(情報学・外国語・保健体育など)
- 専門基礎科目(解剖学・生理学・臨床医学・関係法規など)
- 専門科目(経絡経穴学・鍼灸治療学・鍼灸実技・臨床実習など)
2.はり師・きゅう師の国家試験の受験手続き
はり師・きゅう師の国家試験は毎年2月に開催されるため、大学や専門学校の卒業前に受験する流れが一般的です。養成学校で3年以上学び、卒業資格を得た人に受験資格が与えられます。
必要書類を用意して期日までの手続きと、受験手数料の振込などが必要です。国家試験の概要や内容は後述しますが、書類の提出方法や申込期日などをしっかりと確認してもれのないように手続きしましょう。
3.はり師・きゅう師の養成学校を卒業
専門学校や大学での学習カリキュラムを修了し卒業します。卒業要件は学校によって基準が異なるため、それぞれ確認しておきましょう。
4.はり師・きゅう師の国家試験を受験
はり師・きゅう師の国家試験は、年1回実施されます。2つの国家試験に合格し申請することにより、厚生労働大臣により免許が与えられ、鍼灸師として働く資格が得られます。
鍼灸師を目指す最短ルート
鍼灸師を目指す最短ルートとしては、高校卒業後に鍼灸の知識と技術を学べる3年制の養成学校に入学し、卒業のタイミングで両方の国家資格に合格することです。
鍼灸師になるための国家試験の概要
「はり師」「きゅう師」国家試験の概要について解説します。
受験手続きで必要な書類
- 受験の願書
- 入力票・写真用台紙
- 卒業(修業)証明書または卒業(修業)見込み証明書
以上の書類を国家試験の申し込みの際に提出します。なお、3.卒業(修業)見込み証明書を提出した場合は、期日までに、卒業(修業)証明書を改めて提出する必要があるため注意が必要です。
受験資格
受験資格は厚生労働省により、以下のように定められています。
「厚生労働省や文部科学省が認定した養成学校や大学などで、3年以上、はり師・きゅう師となるのに必要な知識と技能を修得した者」
国家試験の申し込み
申込期日
試験実施日の前年12月上旬に、申込期日が設定されます。申し込み書類を提出する場合の時間帯や、郵送する場合の消印日付の期日も定められています。
受験手数料
令和6年に実施された第32回国家試験の受験手数料は1科目14,400円でした。はり師・きゅう師の両方を受験する場合は2科目分を支払います。指定された銀行や郵便局の口座に、期日までの振込が必要です。
受験票
受験の申し込みが完了すれば、1月下旬ごろに郵送によって交付されます。
試験・合格発表の日程
試験の日程
試験日は、例年2月の第4日曜日に実施されます。
合格発表の日程
合格者は3月下旬ごろに発表されます。
国家試験の開催地
はり師・きゅう師の国家試験は、全国さまざまなエリアで実施されます。
(北海道・宮城県・新潟県・東京都・愛知県・大阪府・広島県・香川県・福岡県・鹿児島県・沖縄県)
国家試験の内容
はり師国家試験・きゅう師国家試験は、いずれも筆記試験のみです。実技は学校で修了したと認められるため、国家試験での実技試験はありません。
- 筆記試験:170問(170点)
- 試験方式:4つの選択肢から選ぶマークシート方式
- 合格基準:6割以上の正解率で合格となります。
国家試験の出題科目
はり師国家試験・きゅう師国家試験の出題科目は、はり理論ときゅう理論以外すべての科目が共通しています。はり師・きゅう師の国家試験2つを同時に受験する場合は共通科目が免除されるため、ほとんどの受験生が同時に受験をします。
【はり師・きゅう師資格取得にかかる科目】
- はり理論・きゅう理論
【はり師・きゅう師国家試験共通科目】
- 医療概論(医学史をのぞく)
- 衛生学・公衆衛生学
- 関係法規
- 解剖学
- 生理学
- 病理学概論
- 臨床医学総論
- 臨床医学各論
- リハビリテーション医学
- 東洋医学概論
- 経絡経穴概論
- 東洋医学臨床論
参考:厚生労働省「はり師国家試験の施行」・「きゅう師国家試験の施行」
鍼灸師の国家試験の合格率
令和6年(2024年)に実施されたはり師・きゅう師国家試験の合格率は、厚生労働省より以下のように公表されています。
【はり師およびきゅう師国家試験の合格発表】
はり師 | きゅう師 | |
受験者数 | 4,176人 | 4,111人 |
合格者数 | 2,829人 | 2,887人 |
合格率 | 69.3% | 70.2% |
参考:厚生労働省「第32回あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師国家試験の合格発表について」
令和6年(2024年)の合格者結果を含め、この数年はり師・きゅう師ともに合格率は7割程度で推移しています。入学後は3年間あるいは4年間、定期テストや実技に励みしっかりと勉強することが大切です。
まとめ
鍼灸師になるには、はり師ときゅう師、両方の国家試験に合格する必要があります。国家試験の合格率は7割ほどなので、3年間養成校でしっかりとサポートを受け、学習することをおすすめします。
鍼灸師としての資格が得られればさまざまな業界で働くことができ、自身で開業することも可能なので将来の可能性も広がります。鍼灸師に興味のある方は、「大阪ハイテクノロジー専門学校」までご相談ください!