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脛の骨の話①

 

「脛」という言葉

膝から足首の間を「すね」と呼びますね。漢字で書くと「脛」となります。裸一貫、己の力だけで身を立てていくことを、自分の腕一本で生きていくなんて表現しますが、これはもともと「腕一本、「脛」一本」という言葉からきていて、自分の体・技量以外に頼りとなるものがないことを意味します。延いては「脛」は自らの足を使って懸命に働くという勤労の象徴でもあるのです。経済的に自立できない子どもが親の扶養を受けることを「親の「脛」をかじる」と表現しますが、要するに自分自身に頼りとするところがないので、親の働きを当てにするという意味で使われるのです。また「「脛」に傷を持つ」となると、自分のやってきた働きに、後ろ暗い部分があるという解釈になります。

 

解剖学的にみた「脛」

さて、もともと「脛」は膝から足首までの間全体を指しており、前面だけでなく後方のふくらはぎも含みます。前面だけを意味する場合、前の意味を持つ「向こう」という言葉を付けて「向こう脛」と呼び分けます。解剖学的には、ここは「下腿(かたい)」という部位になり、長い骨が二本並んでいます。内側の太い方を「脛骨(けいこつ)」、外側の細い方を「腓骨(ひこつ)」と呼びます。この「脛骨」が「脛」前面に剥き出しになって触れるので、一般に「脛」といえば下腿前面の意味で使われますよね。ぶつけるとたまらなく痛むので「弁慶の泣きどころ」と呼ばれたりします。猛者武蔵坊弁慶も、ここを叩かれるとさすがに我慢ならなかったのでしょう。

さて、ようやくこの連載コラムの主人公「脛骨」が出てきました。一人前に働けるようになるためには「脛」をたくましく育てなければならない、なんて比喩的表現を抜きにしても、実際に成長期にはぐんぐんと伸びる骨です。ちなみに英語ではラテン語由来の tibia という名前で呼ばれますが、これはもともと縦笛という意味の言葉で、古代エジプトではこの骨で縦笛を作っていたそうです。

 

「脛」が伸びる場所

一般に女性では小学校高学年ごろ、男性ではそれより2年ほど遅れて中学校に入るくらいから、目に見えて背が伸びてきます。「脛骨」など棒のように長い骨を長骨と呼びますが、この時期の長骨の発育が身長の伸びに大きく影響します。では、この骨はどこで作り出されているのでしょう。成長期の長骨では両端に骨端軟骨(こったんなんこつ)と呼ばれる部分が存在します。骨端線や成長線とも呼びます。X線で撮影すると、まるで骨が分かれているように透けて見えるこの部分は、骨ではなく次々に作り出される軟骨で埋められています。軟骨はX線では映りませんので、透けて見えるのです。ここで作られる軟骨が骨に置き換えられて骨全体の長さを伸ばしています。

 

「脛」が伸びる時

身長が伸びている時には、自分が大人に近づいた気がしてワクワクしましたよね。ただ、気をつけなければならないこともあります。スポーツによって起こるケガ(スポーツ傷害には成長期にしか起こらないものがあり、そのほとんどが骨端軟骨に関係しているのです。成長するにつれ、身体が固くなってきたという経験はありませんか。骨にはさまざまな筋肉がついていますが、骨の長さに筋肉の長さが追いつくのは1年遅れとも言われています。要するに骨が急激に伸びている時は、筋肉の長さは骨の長さに比べて短めになっていて、筋肉の緊張が高まりやすくなっているのです。身体が固くなる影響もそうですが、筋肉が付着しているところを引っ張る力が強くなってしまうということも考えなければなりません。また、この骨は縦笛に使われていたという話が出てきましたが、これは中が空洞になっていることを意味します。骨の中身は全部骨組織で埋まっている訳ではないのです。中の空洞を海綿質(かいめんしつ)と呼ばれる網状の骨組織が埋めており、その隙間は骨髄(こつずい)と呼ばれる柔らかい組織で満たされています。この海綿質のおかげで、骨は重たくなりすぎずに、しなやかさと強さを併せ持つ構造になっています。この海綿質の密度が高ければ、骨密度(こつみつど)が高く丈夫な骨ということになります。しかし、骨の長さが急激に伸びている間は、この海綿質の密度も追いつかず、骨密度が比較的低い時期があるということです。

 

「脛」の骨が成長期の「弁慶の泣き所」にならないよう、気をつけなければなりませんね。さて「脛」の話、今回はここまで。

次回はこの成長期の状態がどんな事態を引き起こしてしまうのか、ここに付着する筋肉にも登場してもらってお話ししたいと思います。それでは、また!✋

 

鍼灸スポーツ学科 山根

 

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