ブログ

blog

アスレティックトレーナー(JSPO-AT)として必要なスキルを実技試験から読み解く!~part7~

≫≫前回のブログはこちら≪≪

後期リハについておさらいしながらまとめていきましょう。スポーツにおける「動き」には、走ったり止まったりする動作のようにどの競技にも共通する「動き」があります。一方で、競技で使うさまざまな大きさや形のボールを投げたり、受けたり、蹴ったり、また特有の跳び方をして見たり、ラケットなど特有の道具を使ったり、特有の「動き」もたくさんあります。もちろん一見して異なる動きの中にも、下半身で発生させた力を指先まで伝えるというような共通要素もたくさん含んでいます。JSPO-AT はこれらのさまざまな動きの特性を理解し、アスレティックリハビリテーション(アスリハ)や傷害予防プログラムの中で動作改善を図る能力が不可欠です。

実技試験の後期リハ問題には、「走る」「方向を換える」「跳ぶ」「投げる」「あたる」「その他」といった問題が含まれます。受験時には、少なくともそれらの動きについてよくわかっておく必要があります。競技するサーフェス(芝生や土、室内の床など)が違うだけでも「走る」方法や「方向を換える」方法も修正が必要です。「跳ぶ」方法も競技よって異なります。「あたる」ことが反則になる競技もあれば基本的な動作のこともあります。まずはその基本的な動作、エラーになりやすい動作を理解し、それを改善させるカード(具体的な方法)をたくさん持っておきます。「こうしろ、ああしろ」と言葉だけで治れば苦労しないので、このエラーを修正するにはこのエクササイズをしてみようという方法を持ってくのです。

ただ、試験対策の中で「この問題が出たらこのプログラムをしなさい」杓子定規な考え方で進めていては、本質の力を身につけることを妨げます。目の前のアスリートが必要としていることを短時間で(部分的であれ)見抜いて、それを改善、克服するプログラムを提供する練習を積むべきです。

投球動作を例に考えて見ましょう。野球における(投手の)投球動作をフェーズに分けて考えることがありますが、これは動作の理解に便利です。はじめの「ワインドアップ期」は踏み込み脚(ステップ脚、右利きであれば左脚)を上げ片脚で立ちます。股関節や体幹が不安定だったり、胸や肩周りの姿勢が悪いと、次の動作に悪影響を及ぼします。この一見単純に見える動作も、人によってエラーの原因が異なるはずです。猫背になったり逆に反りすぎていたり、首の位置が定まっていなかったり、腰周りの安定が乏しかったり、股関節周りの筋力が足りなかったり、足を見たら扁平足だったり、挙げればたくさん出てきます。この片脚で立つ動作の中ですら、人によってエラーが出る原因が異なるということがわかるはずです。それぞれできるだけたくさんのカードを作っておきましょう。同じように、次の「(早期・後期)コッキング期」では、ステップ足を踏み出すと同時に腕を横に上げることになります。ステップ脚で踏む位置、体幹の角度、重心位置、重心移動、肩甲骨の動きや肩そのものの動き、ボールを持つ手の位置、グローブをはめている側の手の動き、などここでもチェック項目がたくさん出てきます。このように各フェイズごとに理解しておけば、目の前の人の投球動作の中で、その人独自のエラーに気づきやすくなります。そこに修正をかけることができれば、傷害リスクを減らしてパフォーマンスが向上した状態で投球動作の再開に向かうことが期待できるのです。

もちろん実技試験と少し違って、実際のスポーツ現場では本人やコーチとのコミュニケーションの中で最善の方法を探っていくことになるので、そういった議論の中で提案できる材料を持っておく取り組みにもなります。

動作を理解し、問題を見抜く目を持ち、それを修正する方法を持っている。これができれば、最終的に目指す動作を逆算して初期リハから計画を立てることもできるのです。

最後に指導法について幾つかポイントを挙げておきます。説明する時やデモンストレーションを見せる時には、相手から見やすところに立ち位置を置きましょう。隣に立ってしまうと相手から見にくくなります。デモも好ましい動きのデモとエラー動作を再現するようなデモの両方ができるようにしておきましょう。かつ自分が見たいものが見える位置取りにしましょう。指導すると同時に今行われている動作の評価をし、問題があれば少し手を入れる必要があるのです。一方的な指導にならず、アスリートの動きの感覚を確かめることも常に行いましょう。説明する言葉の使い方も、相手に伝わることを優先し、わかりやすい言葉になるよう工夫しましょう。

正解がわからないという学生も結構いるのですが、唯一の決まった正解がないことは、ここまで読んできてわかってもらえるかと思います。自分が向き合うアスリートと一緒に正解を見つけ出していく感覚を養いましょう。

さて次で最終回。テーピングのコツをいくつかお伝えしようと思います!

オープンキャンパス・資料請求はこちら

ブログ カテゴリー